6月に咲く花 クリンソウ

21日夜、新宿から特急あずさで長野県富士見町に入った。昨日は9時くらいから雨が
降り始めたので楽しみにしていた入笠山湿原行きは断念したが、湿原に咲くりんどう
40万本が満開のはずが2週間遅れでまだ満開になっていない。朝の散歩で見かけた花は
クリンソウ(九輪草)のようで、山地の湿地に生えるサクラソウ科で綺麗だったね。

今回の訪問は3回目だが、これまで町内を見る機会が無かった。情報収集を兼ねて町内
を回った中で印象に残ったのは、旧富士見高原療養所と患者だった文人達だ。

「富士見高原のミュージアム」は富士見町コミュニティ・プラザの2階にあるが、
1階の富士見町図書館は5年連続日本一の利用率を誇る図書館で全国からの見学者が
引きを切らないそうだ。ミュージアムの夏のイベントスケジュールを伺うと、竹久夢
二展をやるとの事。なんで富士見町で夢二の展示かと思いながらミュージアムを見学
すると、どうやら夢二は富士見で亡くなったらしい。ここ富士見町には大正15年に
町民の要請で出来た富士見高原療養所が創設され、昭和3年には日本唯一の高地療養
所として発足し結核患者を収容した。昭和9年1月に夢二は特別室に入院したが、9
月結核により没している。

旧療養所の写真展示されている写真や「暢気な父さん」の漫画家 麻生さんの絵

そこで、予定外だったけどこの病院を訪ねると、荒川じんぺいさんが旧病棟で待って
おられた。旧棟の2階へ案内されたが、木造の階段のきゅっきゅっと鳴る音が懐かし
かった。JA長野厚生連・富士見高原病院・旧富士見高原療養所資料館館長の肩書き
で、昨年8月就任。80周年記念事業の一つとして、サナトリウムとしてその名を知ら
れる富士見高原療養所の昔からある資料を一つずつ整理しながら旧棟を資料館とし、
現在旧病室を3室まで整備し展示している。
学校の先生の月給が40円の頃、入院費が一日25円しており、多くの文人や著名人達が
入院していた。 昨年、職員や患者が撮影した写真やサナトリウム時代に患者たちに
より結成された白光写真会が残した写真をデジタル加工で修正し120点を公開している。
昭和初期の療養所で働く職員や患者の生き生きした表情、周辺の風景などがよみがえ
っている。

日本映画との関わりを冊子でまとめている

八ヶ岳山麓の2万平方メートルの広大な敷地に、モダンな病院棟が並ぶ療養所に、映画
の撮影隊が次々とロケに来ていた。代表的な映画として「月よりの使者」が紹介され
ていたが、小説とあいまって1934年に上映され爆発的な人気を博したそうだ。この映
画はその後何回もリメイクされ、1976年には山口百恵と三浦友和で再び話題になった。
日本の映画界は、大正から昭和にかけて誕生と合併で賑わい、現在の映画会社の前身
はすべて誕生しているが、その時期がこの療養所の歴史と重なっている。荒川さん
は、「日本映画と富士見高原療養所」、「竹久夢二正伝」などをまとめて閲覧できる
ようにされている。まだ進行形の資料館には映画関係者、地元の教育関係者や小中学
生が徐々に見学に訪れて始めているそうで、ぜひ保存して残していってほしい。

旧富士見高原療養所資料館
  住所:長野県諏訪郡富士見町落合11100
  電話:0266-62-3030
  (富士見高原病院受付にて申し込む、団体は事前予約が必要)
  入館無料
  開館時間:午前9時〜午後4時(所要約30分)
  休日:病院の休日に順ずる。