妻からこの小説を細川藤孝が登場するからと勧められた「光秀の定理」には、新しい光秀像が描かれていた。
折しも、2020年のNHK大河ドラマに光秀が選ばれただけに興味を持って読んでみた。

帯の紹介文にも惹かれる。
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小説の中で、丹波・丹後の地域を紹介している。
「比叡山焼き討ちを済ませ、天正3(1575)年、光秀は京のある山城国の隣国であり、近畿攻略の重要拠点である丹波、丹後征伐の命を信長より受けている。

丹波は福知山を除き、そのほとんどの地域が山塊に囲まれている。平安・鎌倉以来の土豪がその山裾や谷や川に無数に住み着き、そのそれぞれが家柄を病的に誇ること甚だしく、滅多なことでは他人の軍門に下ることを潔くしない。旧家同士の血が入り乱れ、大小の豪族がどこでどうつながっているかも読みづらく、まるで魑魅魍魎が跋扈している中世そのものだった。そのような攻めにくい国だから光秀を見込んだとも言える。」


細川藤孝についても触れる。
「思えば、光秀と藤孝の仲は信長に仕えてから微妙になった。
藤孝はそのまま義昭のもとに仕え、光秀は織田家中でたちまち頭角を現した。5年後、信長は義昭を京から追い出し、藤孝は光秀の与力大名として織田家に迎えられた。かつての主人がその中間に仕えるという奇妙なことになった。元幕臣の筆頭格であり、さらには、十二代将軍の足利義晴の落胤とも噂される家柄を誇る藤孝には決して愉快な立場にはなかったに違いない。むしろ、自分の指揮を執る光秀に対しては徐々に暗い気持ちを持つようになったのではないか。」

光秀が本能寺に何故信長を襲ったのか、また、藤孝が盟友の光秀の誘いの乗らなかったのか。この本の最後での心理的な分析が興味深かった。

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垣根さんの解釈が腑に落ちるところもある。新しい歴史小説として、舞鶴に関わりがあり興味深く読むことができた。